主に理工系の博士号を持ちながら、就職できずに…


 主に理工系の博士号を持ちながら、就職できずにいる若者が「博士浪人」と呼ばれ、クローズアップされたのは10年以上前だった。

 1990年代半ばから国立大学の理工系博士課程の定員が軒並み増やされ、政府の成長戦略の第一の支え手と期待された博士たち。しかし、あにはからんや、受け入れ側の研究所施設の定員は限られ、企業も「専門知識はあるが、社内ですぐに活用できない」とそっぽを向かれた。

 この反省などを踏まえ、今年度から「卓越研究員制度」が始められた。国が毎年約150人の若手研究者らを「卓越研究員」に認定、その受け入れを表明した企業や大学、研究機関などへの就職を仲介することになった。

 文部科学省は既に2月初旬から受け入れ機関の募集を始めているが、これまでに企業や大学・研究所からの受け入れ表明が約300件に上った。先の失敗を踏まえれば、予想外の好調な出だしと言える。

 日本企業は、利益を上げるかどうか正確に見極められなければ、人的なものも含め、技術開発への投資に概して臆病だ。しかし今回、再生医療など先端科学の研究者を待望する企業、研究機関が少なくない。

 ここ数年、ノーベル賞受賞者に理工、医学系の日本人が多く、世界的にその業績が注目され、日本人が自信を深める契機にもなった。科学技術開発の追い風をうまくとらえようとする企業や研究機関のアクションであろう。