久しぶりに歌舞伎座で昼の部を観た。中村芝雀…


 久しぶりに歌舞伎座で昼の部を観た。中村芝雀改め五代目中村雀右衛門襲名披露の公演。雀右衛門丈が「鎌倉三代記」の時姫を、艶やかに、そして切々と演じていた。

 近くの座席に欧米あるいは豪州からと思われる旅行者一家がおり、小学生くらいの女の子もいた。ちょんまげの侍や着物姿のお姫様などが、この少女の目にどう映るのだろう。芝居を観ながら、そのことが気になった。

 話の筋は分からないだろうし、見得を切るところなど不思議な動きをすると思ったに違いない。それでも、初めて聞く三味線や太鼓の響きとともに展開する舞台は、鮮烈な印象として残ったはずだ。芝居がはねて外へ出ると、当日の一幕見チケットの売り場に外国人の一団が列をつくっていた。

 その後、これまた久しぶりに銀ブラをした。海外ブランド店が立ち並ぶ銀座通りを、4丁目交差点から1丁目辺りまで歩いてみた。すれ違うのは外国人観光客ばかりで、ざっと見た目で7~8割を占めている。

 表通りに関しては、銀座はすっかり訪日客の街となっている。卒業、進学、転勤など人生の節目と重なる3月特有の、ややセンチメンタルな気分も手伝って、様変わりした銀座の雰囲気に、うたた感慨を催さざるを得ない。

 とはいえ、多くの外国人に実際の日本を知ってもらうことは、何より日本の文化外交の基本である。それを考えると、外国人観光客の増加は喜ばしいことであるのは間違いない。