1940年代に米国で初めてジーンズをはいた女性。…
1940年代に米国で初めてジーンズをはいた女性。それがインテリアデザイナーのアイリス・アプフェルさんで、ドキュメンタリー映画「アイリス・アプフェル!94歳のニューヨーカー」が公開中。
21年、ニューヨーク州の生まれで、20代にしてインテリアデザインの天職に出合い、稀有なセンスを発揮し続けた。50年代、アンティーク生地を再現するテキスタイル会社を夫とつくって大成功。
世界中を旅して織物や工芸品を集め、2005年にメトロポリタン美術館でコレクション展を開いて驚異的な動員数を記録した。この映画で興味深いのは彼女のファッションと人生哲学だ。
語録が面白い。「自分を美人だと思ったことは、一度もない。私みたいな女は、努力して魅力を身につけるの」。その一つが勉強。テキスタイル会社はその成果で、ホワイトハウスの内装も手掛けた。
「値段交渉には、美学がある。むやみに値切るわけじゃない。でも値切らないと逆に失礼な場合もあるのよ。『50㌦』と言われて50㌦払えば、店主は落ち込む。『言い値を払うバカが相手なら、150㌦と言うべきだった』と」。
背筋をまっすぐにして歩くが、健康も心配。「歳を取り体が弱ると、後ろ向きになる人も多い。でも重病じゃないなら、自分を駆り立てなきゃ。外へ出て、調子の悪さを忘れるの」。老いに勝つ秘訣だ。結局「センスがなくても、幸せならいい」。