東日本大震災から丸5年が経過する。決して…


 東日本大震災から丸5年が経過する。決して短くない年月だが、被災地の復興は道半ばだ。

 人口1万人だった宮城県女川町は、住民の1割近くが犠牲となり、8割近くが住まいを失うという激烈な被害を受けた。その復興の模様を描いた映画「サンマとカタール」(乾弘明監督)が完成し、マスコミ向け試写会が行われた。

 印象的なタイトルは、女川が震災前、サンマの水揚げ量が本州一であり、被災直後にカタールからの支援で作られた水産加工施設が復興の灯となったことによる。

 女川では高い防潮堤を建てないことに決めたそうだ。映画では「私たちは海と離れて生活できない。しかし海が側にあっても高い壁を作れば、海との精神的なつながりが阻害される」という趣旨の話を女川町長がしていた。

 地域の事情を共有する住民たちにして生まれた決断であり、見識だ。その代わりすべての住宅は、嵩上げした土地に建設され、津波が来たら高台に逃げることを徹底させる。高台を目指し駆け上がる「復幸男レース」は年中行事となった。

 思えば我々の祖先は、地震・津波によって家族の命を奪われ、財産を失い、生活を破壊されながらも、それを克服してきた。人が協力し合い、物不足を補いながら新しい町づくりに励む住民の姿は、復興を繰り返してきた日本人の歴史的歩みを見ているようだ。5月7日(土)からヒューマントラストシネマ有楽町他で順次公開予定。