東日本大震災で大きな被害を受けた三陸の沖…


大きな被害を受けた三陸の沖には、世界三大漁場の一つが広がっている。水産業を基幹産業の一つと位置付ける岩手、宮城2県の昨年の水揚げ量は、宮城県が震災前の8割、岩手県が7割まで回復した。

 しかし、原発事故の被害を被った福島県では、まだ15%に留まっている。試験操業の範囲や魚種は確実に広がっているが、風評被害が復興の妨げになっているという。

 福島県産にとどまらない。宮城、岩手両県も、売上高の回復は鈍い。水揚げ量が売り上げに反映しないのだ。水産庁が青森、岩手、宮城、福島、茨城5県の水産加工業者に行ったアンケートでは、その理由として販路の確保・風評被害と答えたのが44%で、人材確保20%を遙かに上回った。

 風評は科学的根拠に基づかない誤ったイメージ、偏見でしかないが、甘く見てはならないだろう。人間の心理を考え、根気よく戦っていかなければならない。

 最も大きな被害を受けている福島県の漁業だが、全く未来がないわけではない。操業を自粛し、魚を獲らなくなった分、資源量が大きく回復するという現象も起きている。

 かつて大戦中に船や人の不足で魚を獲らなくなったため、資源が増え、戦後に漁業が復活すると大漁が続いた。資源の枯渇は日本の漁業全体が抱える問題だ。福島での苦しい経験が何らかの形で生きる可能性がある。禍を転じて福となす気持ちは失いたくない。