毎年10月末から11月初旬にかけて、名古屋国際…


 毎年10月末から11月初旬にかけて、名古屋国際会議場センチュリーホールで行われるのが全日本吹奏楽コンクール。中学校から一般まである部門の中で、高校だけが「吹奏楽の甲子園」と呼ばれている。

 昨年は1555校が参加した。地区大会、支部大会と勝ち抜いて全国大会に出場できるのは30校。甲子園と呼ばれるのは、青春のすべてをかけて練習に取り組み、最高のサウンドを響かせようと情熱をそそぐからだ。

 団員たちは土日祝日の休みも返上し、涙と汗を流しながらコンクールを目指す。その戦いぶりを6校に絞って取材し、全国大会を見届けて書かれたのがオザワ部長著の新刊『吹部ノート』(KKベストセラーズ)。

 高校生の演奏には中学生にも大学生にもない、独特の響きがある。純粋でひたむきな心、日々成長していく技術、プロにはない青春の輝き。顧問や指揮者の先生方もそこに魅了されている。

 八王子学園八王子高校は「一流」をスローガンに進撃。オザワさんは顧問の高梨晃先生に話を聞き、その情熱を伝える。高梨先生は八学のOBで、現役時代は打楽器のパート。指揮も経験した。

 東京芸大卒業後、プロとして演奏活動をしたが、“部活”に魅了され、教員として母校に戻った。生徒たちの「音に向き合う姿勢が本当に純粋で。感動はプロの演奏以上」と打ち明ける。このような先生や団員たちが日本の音楽を向上させてきたのだ。