昨年は徳川家康の四百回忌の催事もあり、…


 昨年は徳川家康の四百回忌の催事もあり、戦国・江戸初期に光が当たって全国的な「城ブーム」を後押しした。

 城と一言で言っても、その建造目的・時期もさまざまで、城跡も含めるとずいぶん多い。この歴史的建造物には、人々の探究心をがっちり受け止め、それに応えてくれる何かがあるようだ。

 家康の手になる屈指の名城、名古屋城。1945年の空襲で焼失、鉄骨鉄筋コンクリートで再建されたが、老朽化が進み耐震性にも問題が出ている。そのため今、河村たかし市長が打ち出した天守閣の木造復元構想が論議を呼んでいる。

 詳細な実測図や写真が残っているため、精度の高い復元が可能とされるが、問題は最大約400億円かかる費用だ。ほかに耐震改修案もあり、それであれば10分の1の費用で済む。住民説明会では、復元派が「文化遺産になる」「孫に本物を見せたい」、一方「財源はどうするのか」「人命に関わる事業が優先」と改修派の意見も。

 今、天守閣の中には実物大の金の鯱のレプリカ(複製)が展示され、間近で観察できる。まるで生きているように尾を高く跳ね上げ、口を広く、目をカッと大きく開けた鯱の面相は異形だ。

 家康の豊臣秀吉に対抗した天下取りへの意欲と自信がみなぎっているように見える。一事が万事、当時にあって規格外の絢爛豪華、緻密な造りだ。城好きには、本物の城本体も大いに見たい気がする。