「去年(こぞ)今年」は、新年の季語。元日の…
「去年(こぞ)今年」は、新年の季語。元日の午前0時を境として年が変わることをいう。短い時間の中で生まれる感慨のようだ。
「去年今年貫く棒の如きもの」(高浜虚子)はあまりにも有名だ。「去年だ、今年だ」と言ってみても、実際には棒のような確かな存在感を示しながら時間は連続している。時間のそんなふてぶてしさへの驚きがこの句にはある。
が、「去年今年去年今年とて今更に」(能村(のむら)登四郎(としろう))の句になると、年の移り変わりは毎度のことで、特別な感慨が生まれるわけではない、といった「感慨のなさ」がテーマだ。
それもそのはず。ある程度以上の年齢に達した作者にとって新年は、当然のようにやってくるものと感じられる。年の切り替わりはそこそこ大事なものには違いないが、深い感慨と共に迎えるほどのものではない。そんな思いが「今更に」の語に表れている。
もちろん、子供のころはそうではなかっただろう。新年になれば、いずれ1歳分は年をとるのだから、新年にはそれに見合っただけの重みが付きまとう。が、子供もやがては大人になる。新年の重みは、年齢が高くなるほど軽くなるのかもしれない。その果ての「今更」なのだろう。
能村の句からは「一年の計は元旦にあり」とか「新年だから心を新たにして頑張ろう」といった姿勢は全く感じられない。そうした前向き感とは違った、もっと突き放したものがこの句にはある。