「一神教、多神教という区別は、宗教自体に…
「一神教、多神教という区別は、宗教自体に内在する『一と多、多と一』の思想からみれば、さしたる意味を持たない」(『守護聖者』中公新書)と宗教現象学者の植田重雄さんはいう。
仏教には多くの仏法守護の尊神があるが、集約すれば、究極の唯一の実在「仏法」に到達する。キリスト教の場合にも多くの守護聖者がいて、教会や広場や路傍など至るところ祀られている。
ヨーロッパの中世は聖者文化の時代でもあり、聖者が教会の名となり、祀る日が定められ、職業によっても守護聖者は異なっていた。その一人、聖ニコラウスはサンタクロースのモデルになった人物。
3世紀に小アジアのミュラで司教を務めたニコラウスと、6世紀に同じ小アジアでシオン修道院の院長をしたニコラウスが、一つの像になったとも言われる。2人は憐れみ深く、多くの伝説が残された。
ニコラウス崇拝がヨーロッパに入ると、お供を連れて歩き、子供に恵みを施す聖者となる。12月6日がこの聖者の日で、お供にプレゼントの袋を担がせて、子供のいる家を訪れる。
一年間どんないたずらをしたか、しつけを良く守ったか、と叱ったり諭したりする。「子供にとっておそろしい存在で、日本でいえば、秋田県の男鹿半島地方に伝わるなまはげの行事に似ている」(『ヨーロッパ歳時記』岩波新書)と植田さんは語る。彼はドイツで民間習俗を調べ、日本文化との類似点を見出したのだ。