<一葉忌とはこんなにも暖かな>(川崎展宏)…


 <一葉忌とはこんなにも暖かな>(川崎展宏)。樋口一葉の命日である1カ月前の23日は、二十四節気の小雪だった。寒さが近づくのを感じる中でも、まだ晩秋の日差しが快い小春日和の日が続くことが少なくない。

 それでも例年は長くて月末までで、コートの襟を立てる師走になると、木枯らしが暖かな気も吹き飛ばしてしまう。それが今年は違って<暖かな>日が今月半ばまで続いた。朝晩の冷え込みに、冬を感じるようになったのは、ようやくこの数日前から。

 といっても同時期の平均気温より、まだ1~2度高いのだから、どうやら今年は暖冬となりそうだ。そしてきょうは「日南の限りを行て日の短きの至りなれば也」(暦便覧)の冬至。1年のうちで最も昼の短い日であり、最も夜の長い日である。

 古くはこの日が1年の始まりで、各地からは冬至の慣習としてゆず湯の話題が聞こえてくる。ゆず湯で体を温めてかぜ知らず、と薬効をうたわれる一方で、ゆずの香りで体を清めて1年のスタートを、という謂れも。

 白い花を初夏に咲かせ、黄色い色も鮮やかに実をならせるゆず。そのしなやかな香りは冬の鍋ものによし、焼き魚によし。ゆず味噌やゆず胡椒は味と香りをダブルで楽しめる調味料の優等生である。

 暖冬とはいえ、本格的な冬はこれから。しっかり冬の食を楽しみ、快眠で冬の峠を乗り越えたい。<早く目の覚めて二度寝の冬至かな>(稲畑汀子)。