「星空へ総身のばし枯木立つ」(成瀬正とし)。…


 「星空へ総身のばし枯木立つ」(成瀬正とし)。そろそろ今年が終わることを意識する時期。毎年のことながら、街ではクリスマスへ向けての商戦やイベントを見かける。

 夜のイルミネーションなどもそうだが、クリスマスは年の終わりの前夜祭のように感じられる。終わるとすぐ、正月の松飾りを販売する露店などがお目見えするからである。

 年末には、全国各地のコンサートでベートーベンの「第九」が演奏される。これを聞かないと、今年が終わった気がしないという人もいるだろう。これも年末の風景と分かち難く結び付いて定着した。

 本来、これらのイベントは相互には関係ないのだが、長年恒例行事として行われることで、いつの間にか一連の儀式のようになったのである。背景には、正月をはじめ日本の伝統行事の多くが道教や仏教などから生まれた外来の文化だったこともあるだろう。

 それが日本文化として定着していき、今では古くからの行事のように違和感が無くなっている。その意味では、キリスト教のクリスマスも比較的新しい時代に到来したというだけの違いであって、やがて日本の伝統文化ととらえられるようになるのかもしれない。

 文房具屋でも書店でも、来年のカレンダーや手帳が売り場の目立つ所を占めている。もう来年のことを考えなければならないのか、と時間に追われるような気分になるのも毎年のことである。