短編小説を収録した作品集が送られて来る…


 短編小説を収録した作品集が送られて来ることがある。250ページ程度の本で、10編ほどの作品がある。だが、作者についてのデータはほとんどなく、ただ作品が並んでいることが多い。

 「作品が全て」という発想がそこにはあるのだろう。その考え方は間違いではない。太宰治にしても、心中未遂や飲酒といった無頼のエピソードだけで知られているわけではない。『晩年』『斜陽』『人間失格』といった傑作によって彼の名前は残っている。

 それにしても、無名の作者による作品集に書き手についての情報がないのは異様だ。これでは「作者はどうでもいい」ということになるしかないが、本当にそうだろうか?

 昔は「作品も重要だが、書き手も重要」というのが普通だった。「作品が全て」というのはここ30年ぐらいの間に生まれた新しい考え方だ。

 作品集を自費出版する作家たちも、こうした考え方に基づいているようだ。しかし、自費出版だとすれば、スポンサーは自分自身だ。気取る必要はないのではないか。

 長めの「あとがき」を書いて、作品の背景になった事情を記してもいい。誰かに解説を頼んでもいいだろう。小説ばかりではなく、エッセーの1、2本も加えるなど、自身を直接紹介する方法はあるはずだ。高額な資金を使った出版なのだから、個性や経歴を紹介するなど工夫次第で、小説作品そのものも生きてくると思われるのだ。