「水温の上昇とともに、メイン州ではニシンが…
「水温の上昇とともに、メイン州ではニシンが減ってきている。水温の上昇が唯一の原因ではないだろうが、たしかに影響は及んでいる。ニシンが少なくなるにつれて、南から他の種類の魚が入りこんできた」。
海洋生物学者レイチェル・カーソンが『海辺』で書いた、1950年代の米大西洋岸での出来事。暖かいメキシコ湾流が北上し、コッド岬で東の沖に流れていく。一方、北から冷たい海水が流れてきてこの岬でぶつかる。
コッド岬は数千種の生物たちの生息区域の境界なのだ。ワタリガニはじめ多くの生物が南から水の冷たい地域に侵入してきたのは30年代ごろから。メイン州はコッド岬の北で、水の冷たい地域にある。
同様の現象は北海道の海でも起きて、ある時期にニシンが消えてしまう。1897年に水揚げが97万トンだったのが、1950年代に姿を消し、現在は200トン前後。そのため大部分は輸入に頼っている。
「今年のカズノコ 品質は上々」(小紙12月8日付)によると、今年はアラスカなどで親魚のニシンが大漁。鮮度の高い原料が供給されているため、品質の良いカズノコが市場に出ているという。
長年主流だったのはカナダ産で、ロシア産や欧州産もあるが、ここ数年、アラスカ産が急増している。首都圏のスーパーでは1箱300~400グラム入りが3000円前後で、本体の身肉よりずっと高い。日本人の魚卵嗜好の表れだ。