広大な領域に、多数の小さな島々を抱える…
広大な領域に、多数の小さな島々を抱える南太平洋の多くの島嶼(とうしょ)国。近年、地球温暖化による「海面上昇」の危機的状況にあることで知られるようになった。
ところがその一方で、国土地形の独特な様相も手伝って、海洋管理でも試練の時を迎えている。笹川平和財団プロジェクト・コーディネーターの早川理恵子さんが、都内で行われた日本海洋政策学会で発表した。
例えば、島嶼国の一つキリバス共和国は人口約10万人、東西約3870㌔の海域に33の島が散在している。そのため、排他的経済水域(EEZ)は約354万平方㌔もあり、日本の同447万平方㌔の約80%に上る。
大きな可能性を持つEEZだが、その警備となると心細い。島嶼国の警察能力は概して低く、しかも海洋警察1人当たりがカバーするEEZ面積は、キリバスの場合、日本の205倍。その結果、広大な太平洋は違法操業のほか、漁船による麻薬密輸など越境犯罪の温床になっているという。
「小島嶼国のEEZ管理は国家安全保障として本来主権の範囲であるものの、現実問題として外部の協力は必須」と早川さんは報告している。
国際法を守らないような団体、国の動きが憂慮される。またキリバスの島々で浸水が常態化し移住せざるを得ない事態になると、この広大な経済水域の権益はどうなるのか。国際社会の今の枠組みの中では想定していないことが起こる可能性がある。