時の蔵相池田勇人は「闇行為などを行って…
時の蔵相池田勇人は「闇行為などを行っていたために倒産したり、自殺したりすることがあっても、気の毒だがやむを得ない」という趣旨の国会答弁を行った。
それが昭和27年のきょう。反発した野党の提出した不信任案が可決されたため、池田は蔵相を辞任した。その2年前の昭和25年、会見で「5人や10人の中小企業が倒産し、経営者が自殺してもやむを得ない」との趣旨の発言をしたことが伏線となっていた。
だが、25年発言は中小企業の経営者一般についてのものであるのに対して、27年発言は闇屋に限定されている。後世の者からすれば、25年発言は「問題あり」だが、27年発言は自殺云々はともかく、闇行為を批判するものと捉えれば理解できなくはない。
27年発言は、25年発言についての確認を求められてのことだった。「こういう流れの中での発言だったのですよ」という答弁の過程での発言だ。このことは、吉村克己著『戦後総理の放言・失言』(文春文庫)という本の中に書かれている。
単語だけを取り出して攻撃するのは、21世紀の今でも野党やメディアが普通に行っている光景だ。闇屋は当時はそれほど悪いものではなかった、という事情もありそうだ。なお池田は、大臣は辞任したものの、国会での発言は撤回しなかったという。
後に首相となった池田は「所得倍増」のスローガンを掲げ、日本の高度経済成長を牽引することになる。