現存する最古の絵巻物は12世紀前半に制作…
現存する最古の絵巻物は12世紀前半に制作された国宝「源氏物語絵巻」で、日本4大絵巻の一つである。徳川美術館(名古屋市東区)に15面、五島美術館(東京・世田谷区)に4面が所蔵されている。
このうち徳川美術館所蔵の絵巻の保存・修復作業の過程で、計3面から下絵のあることが明らかとなり、制作中に絵柄の変更があったことが分かった。同館では紙の劣化や絵の具の剥落が進んだことから、3年前から江戸時代以来の修復を始めた。
裏紙を剥がしていくと、下絵が裏から透けて見えるようになった。赤外線写真の撮影など最新技術を駆使して、鮮明に浮かび上がった下書き線から絵柄の変更を確認できたのである。そのうちの1面が「柏木(三)」。
光源氏が正妻・女三宮と別の男性との間に生まれた幼児・薫を抱く場面で、下絵では薫の腕は光源氏の顔へ伸ばしていた。それが実際の絵では、薫の両腕は衣に包まれている。「不義の子であり、(子のかわいさより)光源氏の苦悩を主題にしたいと考えて変えたのだろう」(同館の四辻秀紀学芸部長)。
絵師の内容を掘り下げようとする苦心のあとも伝わってくる。800年前の平安の世界に飛んで、想像はいろいろに膨らむのである。
同館では14日から始まった企画展「全点一挙公開 国宝 源氏物語絵巻」で、絵巻19面を10年ぶりに全点公開するとともに、下絵の透過赤外線写真パネルも展示している。12月6日まで。