ニクソン政権以来30年近く米国の対中政策に…


 ニクソン政権以来30年近く米国の対中政策に深く関わってきた、米国防総省顧問マイケル・ピルズベリー氏の話題の書の邦訳『China2049 秘密裏に遂行される「世界覇権100年戦略」』(日経BP社、野中香方子訳)が出た。

 序章で著者は告白している。「米国の対中政策決定者の多くが脆弱(ぜいじゃく)な中国を助けてやれば、中国はやがて民主的で平和的な大国になる。中国は大国となっても地域支配、ましてや、世界支配を目論(もくろ)んだりはしない、といった仮説に基づいてきたが、これらは危険なまでに間違っていた」。

 中国の戦略を見抜けず騙(だま)されてきた悔恨が行間に滲(にじ)み出ている。

 同書出版前の昨年暮れ、小紙の早川俊行ワシントン特派員が、ピルズベリー氏にインタビューしている。「中国に対する甘い思考を捨て、対中政策を改める時か」との質問に同氏はこう答えている。「改めるのは困難だろう。中国に隠れた意図はないとする固定観念が強すぎるからだ」。

 しかしその予想を覆す事態が起きた。南シナ海南沙諸島の埋め立て・軍事基地化は、米政権の対中認識を根本的に変え、その12カイリ以内にイージス艦を派遣するまでに至った。ピルズベリー氏の著書が影響を与えたことも考えられるだろう。

 問題は、これからだ。力による現状変更は断固として認めないという意思表示と行動を国際社会が一致してとれるかどうか。外遊中の安倍晋三首相の外交手腕が問われている。