公開中の映画「シネマの天使」を観る機会が…


 公開中の映画「シネマの天使」を観る機会があった。これは昨年夏、122年の長い歴史に幕を閉じた、広島県福山市にあった映画館「大黒座」をモデルとしたドラマで、映画と映画館をテーマにした詩的な作品。

 大黒座は1892年に劇場として誕生したが、火災や空襲などで焼失し、閉館時まで残った建物は4代目だったという。戦後、劇場と映画館を併設するようになり、1960年代には年間40万人が来場。

 「アラビアのロレンス」「大脱走」「マイ・フェア・レディ」など大作が次々上映され、多い時で1日に7回上映し、5000人もの客が足を運んだこともあったという。それは地元商店街の歴史でもあった。

 監督の時川英之さんによると、物語はフィクションだが、「本当の大黒座を感じられるような作品」にしたいと思って、スタッフや観客に取材してエピソードを盛り込んだ。映画館も壊される前の実物。

 閉館する映画館は全国で相次ぎ、エンディングでその一部が紹介されている。だが日本映画産業統計によると、全国のスクリーン数は増えていて、2000年に2524だったのが14年には3364に。

 形態は通常映画館から、同一施設内に複数のスクリーンを用意したシネコンが主流になった。上映本数も増えて00年の644本が、14年には1184本に。入場者数も増えている。古い映画館は時代の荒波をかぶっているのだ。