東芝は、不正会計問題に重大な責任があった…


 東芝は、不正会計問題に重大な責任があったとして、田中久雄氏ら歴代3社長を含む旧経営陣5人に対し、総額3億円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。

 社外の役員責任調査委員会が出した報告書の「提訴によって責任を追及することが相当」との指摘に応じたアクションだろう。不祥事が生じた際、外部の識者に原因究明を依頼し、内部の“悪”を摘出して再出発を図ろうとするのは東芝に限らない。

 それに株主の突き上げもあるので、一刻も早く事態を収拾し、経営立て直しを急ぎたいという気持ちも強いのだ。が、どうも引っかかることがある。報告書は、不正会計が「同時並行的、組織的に実行され、経営判断として行われた」と断じている。

 日本を代表する有力企業の一つで、なぜグリム童話の「ハーメルンの笛吹き男」よろしく、笛吹きの笛(旧社長らの号令)に、エリートたちが易々と踊らされ“企業犯罪”に走ってしまったのか。

 東芝の取締役会には外部取締役が過半数を占める監査委員会がある。だが、今回の件では監査委も外部監査も機能しなかった。不正を許す企業風土があったのか。これらの真相は依然闇の中だ。

 善意に解釈すれば、日本を代表する企業の誇りを全社一丸で保持しようということだったのかもしれない。社員たちの声はいろいろあるだろう。ともかく海外の目にも厳しいものがあったことを忘れてはならぬ。