<故郷の訛り懐かし停車場の人ごみの中そを…


 <故郷の訛り懐かし停車場の人ごみの中そを聞きに行く>。石川啄木の時代のように、故郷はもはや遠くはなくなったが、それでも、その訛りは懐かしい。先日、東京・銀座の歌舞伎座で開演を待っていたところ、後ろの席から故郷の方言で話す声が聞こえてきて、どうも気になった。

 もれ聞こえてくる会話からすると、歌舞伎観劇を目玉にした東京観光にやって来たらしい。やはり地方の人々にとって、特に年輩の人たちには、歌舞伎座は憧れの舞台である。松本幸四郎さんが弁慶、市川染五郎さんが富樫を演ずる「勧進帳」に、後ろの同郷人もいたく感動していた。

 現在行われている顔見世公演の夜の部では、市川海老蔵さんの長男で2歳7カ月の堀越勸玄君の可愛らしい初お目見得のあいさつもあった。きっといい土産話になったはずだ。

 東京観光では、小さな子供たちやその親たちには、東京ディズニーランドがあり、それに東京スカイツリーも加わった。地方と東京の間は、安価なバスツアーもあり、ぐっと近くなっている。

 一方で、首都圏からの地方移住が大きなテーマとなっている。地方に行けば、自然があり、ゆったりした時間が流れている。ただ、文化的な催しや刺激は限られるので、物足りなさを覚える人もいるかもしれない。

 そんな時は、ふらりと東京へ来て、新しい空気を吸って刺激を受ければいい。こんな生活スタイルも悪くはない。