早稲田大学は、STAP細胞問題の当事者…
早稲田大学は、STAP細胞問題の当事者だった小保方晴子氏の博士号(工学)取り消しを発表した。STAP問題とは別件だが、STAP問題の原点が博士論文だったことは紛れもない。
博士論文には、特に引用に関して問題があった、と認定された。問題の重みを考えると、博士号取り消しが相当、というのが大学側の判断だ。
2006年度以降早大に提出された博士論文2789本のうち、89本に引用文献の記述の不備が見つかったという。ポイントは「引用」だ。文科系、理科系を問わず、あらゆる研究は、それ以前の業績を踏まえて行われる。
アリストテレス(哲学)はプラトンを、アインシュタイン(物理学)はニュートンを踏まえている。学問ほど厳密ではないが、芸術の分野でも同じような問題は起こる。先行作品に似過ぎていれば、贋作や模倣と見なされる。
特に現代の学問研究にあっては「ここまでは先行の研究」「ここからは自身の独創」という区分が厳密になされることが求められる。小保方氏は、そのあたりの要求に関して鈍感だったようだ。
そういう博士論文を通してしまった大学側にも問題はあるが、現在の情報化社会の中、研究に関する情報が安易に手に入るという事情も大いに関与しているだろう。当然ながら、この種の問題は早大だけのものではない。発覚しなかったからそれで済んでいる、という例はたくさんあるはずだ。