「どんな山でも、ベースキャンプに到着したら…


 「どんな山でも、ベースキャンプに到着したら、私はまず、歩きまわって他のチームのメンバーに話しかける」と米国の登山家アリソン・レヴァイン女史は著書『エゴがチームを強くする』(CCCメディアハウス刊)で書いている。

 登頂ルートで出くわすはずの登山家全員にあいさつするという。トラブルが起きた時、よそのチームが頼りになる場合があるからだ。彼女がこの教訓をどこで得たのか記していないが、エベレストでは重要だ。

 ベースキャンプには管理機構がない。が、そこには多くの登山チームが集まる。壊れたルートは誰が修繕するのか。その費用を誰が負担するのか。また渋滞を避けるため登頂のタイミングをどう調整したらいいのか。

 それらの問題を解決するために、遠征チームのリーダーたちが集まり話し合う必要がある。会議がすんなりと進む場合もあれば、紛糾することもある。が、登山をより安全にするためには不可欠なのだ。

 だが1990年代には、チームを超えて協調関係を築くことは一般的ではなかった。あす公開される映画「エベレスト3D」はそれを伝えている。96年に起きた遭難事件を再現した作品だ。

 主人公は登山ガイド会社のロブ・ホールで、高山ガイドのパイオニア。ベースキャンプで各リーダーを集めて協議しようとしたが、応じたのは1チームだけ。ロブを含む8人の遭難死は再発防止のための多くの教訓を残した。