旭化成建材のくい打ち工事データ改竄問題で、…


 旭化成建材のくい打ち工事データ改竄問題で、イタリアのベネチアのことがしきりと頭に浮かぶ。「アドリア海の真珠」と呼ばれるこの美しい街は、外敵の侵攻を逃れるために、湖沼地帯の埋め立て地に築かれた。軟弱な地盤にあるため、建国は沼地に無数の木杭を打ち込む作業から始まったのである。

 塩野七生さんの出世作『海の都の物語』は、この建国事情から始まり、やがて地中海貿易で莫大な富を築いて海洋大国となるベネチアの歴史を描いた。

 杭を打つ基礎作業が、800年近い繁栄の文字通り基礎となったわけだ。次に海洋国家として栄えたオランダも、似たような背景を持つ。国土のかなりの部分が満潮のたびに海水に浸されたこの国では、国造りは長大な海岸堤防の造成から始まった。オランダ名物の風車も、元々は堤防を超えて侵入した海水を汲み出すために造られた。

 『繁栄と衰退と―オランダ史に日本が見える』で故・岡崎久彦氏は、このような自然との絶えざる戦いが、オランダ人の堅忍不抜の国民性と進取の気性を培い、海洋時代の先駆者として活躍する素地をつくったとしている。

 そういう意味で、両国の繁栄は、厳しい自然環境を克服したことに対する天のご褒美のようにも見える。一方、今南シナ海の島々を埋め立て、軍事基地化を進める国がある。

 両国と違い、その国は周辺国と軋轢を起こしながら進めている。天がこれを嘉したもうことはあるまい。