平成21年の生命保険世帯加入率(個人年金保険…


 平成21年の生命保険世帯加入率(個人年金保険を含む)は90・3%で、米国の78%、英国40%と比べるとずいぶん高い(24年度、生命保険文化センター調べ)。

 「転ばぬ先の杖」と、先々のことを考えて手を打つ日本人の堅実さがよく表れている。保険業界は長年、人々のこうした特質の上に胡坐(あぐら)をかき高い契約率を誇ってきたと言えまいか。今世紀に入って続いたいくつもの不祥事の背景には顧客軽視があった。

 というのも、会社側は保険の契約時はいい顔をするが、あとは知らんぷり。契約を獲得するのに、同業他社を誹謗(ひぼう)中傷する「風評営業」もしばしば摘発された。ところが今日の顧客離れ、外資系生保の参入などで、危機感を隠さない。

 明治安田生命保険の根岸秋男社長は「既存顧客のアフターフォローに力を入れ、営業職員に対する評価も変えたい」と述べ、新賃金制度の導入を検討していることを明らかにした。解約率の低い営業職員の給料引き上げを図る方針だ。

 同社の保険継続率は契約2年後で約86%。人件費が増えても解約率を低く抑えることができれば、収益拡大につながるとみており、29年度からの適用を目指す。業界内の改革に重い腰をやっと上げたかと思う。

 また同業界は、経済バブル期を経て利殖にのめり込んだが、頭を冷やすべきだ。顧客への思いやりを持つ保険業の初心に戻ること――客と接する営業職員の待遇改善はその第一歩だ。