新潟県阿賀野市に五頭(ごず)温泉郷がある。…


 新潟県阿賀野市に五頭(ごず)温泉郷がある。新潟平野が東で尽きて山に入っていく、その境目で、南北に延びる国道290号に沿って南から村杉温泉、今板温泉、出湯温泉とレトロな温泉が点在している。

 東にそびえるのは県立自然公園の五頭山(912㍍)で、五つの峰があることから名付けられた。中腹には新潟薬科大学によって設置された薬用植物園があり、山中には250余りの句碑が並ぶ林道もある。

 土産物屋「うららの森」で知ったのは、近くの瓢湖に白鳥が飛来しているということだ。16日の時点で、2666羽いるという。宿の人の話では、昼は湖にはあまりおらず夕方帰ってくるそうだ。

 夕暮れ前だったが、車で瓢湖へ向かっていくと、稲刈りの終わった田んぼに300羽ほどがいた。のどかで平和な情景だ。白鳥は大型で気品と風格があり、チャイコフスキーが「白鳥の湖」を作曲したのもうなずけた。

 近くの畑で農家の夫妻が仕事をしていたので話を聞いてみると「ふだんここに来ることはないのですが、きょうは珍しくやって来ました」。落ち穂を餌としているそうだ。カメラを向ける観光客はいなかった。

 瓢湖は1954年に「白鳥の渡来地」として国の文化財指定を受け、2008年にはラムサール条約に登録された。毎年6000羽以上が越冬するという。帰路、磐越自動車道を通って東に向かったら、磐梯山の麓でも白鳥の群れを見かけた。