鉄筋の建物が地方でも一般的になってきた…
鉄筋の建物が地方でも一般的になってきた1980年代半ば、コンクリートの骨材に塩分を含んだ海砂が含まれていると、ある新聞が指摘し、ちょっとした話題になったことがある。
手抜き工事のハシリのような事件だったが、実害を被った建物は特定されず、その後うやむやになってしまった。建材と言っても、国民一般の注目度がいまひとつだったせいもあるだろう。
今は30年前と比べて生活様式が多様化し、「住」の在り方は生き方に直結すると考える人も少なくない。それだけに、横浜市都筑区の大型分譲マンションで起きた手抜き工事は、人々の夢実現の望みに乗じたずいぶん卑劣なもので、社会に与えた影響も大きい。
基礎工事でくいの一部が地中の硬い地盤に達しなかったため、4棟のうち1棟は2㌢余り傾いている。直接的には、現場責任者の1人が意図的にデータを改竄(かいざん)したことに非があるが、親会社が全体の施工管理をしていなかったという事実は重大だ。
それぞれの建材の品質は高いから、組み合わせるだけでいいといった気の緩みや、現場任せで良しとする雰囲気があったのではないか。住宅はいわゆるステータスでもある。住む人たちのことを親身に考えた家造りには程遠い。
背景に、建設業のグローバル化、相次ぐ新規参入による過当競争があり、建設費用を切り詰めることに終始しているという指摘もある。厳しい時代の波を乗り切ることができるのだろうか。