濁流で水浸しとなった平野、押し流される住宅…


 濁流で水浸しとなった平野、押し流される住宅、屋根に上って助けを求める人。関東・東北地方を襲った豪雨は、わが目を疑うような被害の惨状を残した。11日夜の時点で3人が死亡し、22人が行方不明となっている。

 この大雨が襲う前の9日未明、NHKスペシャル「巨大災害Ⅱ 日本に迫る脅威 第1集 極端化する気象~海と大気の大変動~」が再放送された。番組は将来、かつてない規模の豪雨が日本を襲い大変な被害をもたらすと予想、大洪水で家が流される場面をCGで表現していた。

 それを見ながら「いたずらに恐怖心を煽(あお)る」との思いもちらりと頭をかすめた。しかし、実際それに近い状況が今度の水害で起きたのだ。

 番組が、そのような巨大災害の発生を想定するのは、地球温暖化によって海水温の上昇、北極圏の氷の面積の縮小などが起きているからだ。それがどんな影響をもたらすか、世界の科学者の分析を基にしている。

 大災害のたびに「何十年も生きていて、こんなことは初めて」という声を聞く。確実に温暖化の影響が出ている。これまでの災害対策は、温暖化前の経験やデータを基に講じられてきた。被害が大きくなる根本原因はそこにある。

 津波と同じように大雨対策も、これまでの経験知を超えた演繹(えんえき)的な予測を基に作り直さなければならないところにきている。もちろん、温暖化対策が待ったなしであることは言うまでもない。