「秋出水(でみず)稲の穂首をとらへたり」…


 「秋出水(でみず)稲の穂首をとらへたり」(鈴木玉●〈=札の木を虫に〉)。「秋出水」という季語について、稲畑汀子編『ホトトギス新歳時記』では「台風季の豪雨によって、秋も出水が多い。単に『出水』といえば夏季、五月雨(さみだれ)ごろの出水をさす」と説明している。

 昨日の早朝、東京湾を震源とする地震(東京都調布市で震度5弱)があり、朝に弱い気流子もさすがに驚いて目が覚めた。関東・東北地方で豪雨による川の堤防の決壊で被害が出ていたため、なおさら驚きが大きかった。

 自然災害は人間の思惑を超えて突然襲来する。「天災は忘れた頃にやってくる」という言葉もある。これは物理学者で文学者の寺田寅彦のものと言われているが、心の準備がないままに出遭うとパニックになりやすいので気を付けたい。

 かつては、恐いものとして「地震雷火事親父」が挙げられていたが、親父の権威は下がりっ放しで、現在では実情に合っていない。この言葉の背景には父親の権威が高かった家父長制度があるという説がある。

 時代とともに恐いものが変わってくるというのは当然だ。しかし、自然災害ばかりはいつの時代も恐いのは同じ。

 最近、秋めいていたと思っていたら、また暑さがぶり返したりと不安定。場所によってはセミの鳴く声がする。季節外れと言ってもいいが、木々の多い地域ではセミもまだ元気なようだ。夏の終わりを引きずっているようで、少しばかり寂しいけれどほっとして嬉しい。