シリアの中部にあるパルミラは古代の隊商都市…


 シリアの中部にあるパルミラは古代の隊商都市として知られてきた。栄えたのは紀元前1世紀から3世紀にかけてで、ローマ帝国と東方のペルシャやインドや中国を結ぶ通商路の拠点だった。

 緩衝地帯の位置にあったが、273年にローマ皇帝アウレリアヌスによって攻撃され、陥落して廃墟となった。遺跡が発見されるのは18世紀半ばで、英国の探検隊が報告書を出版すると建築史研究者たちの注目を集めた。

 ベル神殿をはじめとする複数の神殿、巨大な列柱のある路、円形劇場、四面門などが残されていた。そこにはメソポタミア文明とギリシャ文明の影響が見られて、東西文明の融合を物語っていた。

 パルミラはまたタデモルとも呼ばれていて、旧約聖書にはイスラエルのソロモン王が「荒野にタデモルを建て」(歴代志下8章4節)たと記されている。ナツメヤシの意味で、オアシスにこの木が繁茂していたという。

 人類歴史の足跡を伝える遺跡なのだ。1980年にユネスコの世界遺産に登録され、観光地としても知られていた。が、過激派組織「イスラム国」は先月18日、パルミラ遺跡の元管理者ハレド・アサード氏を公衆の前で殺害。

 23日にはバールシャミン神殿が爆破され、続いてベル神殿の一部も破壊された。人類にとっての大きな損失である。蛮行はエスカレートしていて衝撃的だ。国際社会は実効性のある対応を迫られている。