「ふるさとに墓参のこゝろありながら」…


「ふるさとに墓参のこゝろありながら」(河合正子)。お盆の時期になると、不思議にセミの声もうるさいという感じがしなくなり、しっとりとしめやかに聞こえてくる。なぜかは分からないが、そんな印象を受ける。

 日本の伝統文化では1年を細かく区切っているため、現在では季節ごとの習慣などで戸惑うことが多い。例えば、夏季に出す暑中見舞いと残暑見舞いの違いである。

 7月でも8月でも暑ければ、暑中見舞いでもいいだろうとつい考えてしまう。だが実際には、暑中見舞いは梅雨明けから立秋(8月7~8日ごろ)。残暑見舞いは、それ以降から8月31日ごろまでである。旧暦に通じていないと、区別するのはなかなか難しい。

 知人への便りをメールなどで済ませてしまう世代にとってはなおさらだろう。気流子も時々、混乱したりする。また、時候のあいさつを書こうとして、どんな常套(じょうとう)句だったかと、はたと手を止めてしまうことがある。

 決まり切ったあいさつの言葉でも、結構知らないものが多い。あわてて辞書を引いたり、インターネットで検索したりして調べることになる。

 そのあいさつをハガキの冒頭に書き込み、なんとなく収まりの悪さを感じることもたびたび。お仕着せのような印象を受けるからだ。とはいえ、こうした決まりや習慣は歴史的な背景を持っている。人間関係の基本として次代にしっかりと伝えなければならない。