アフリカの都市に駐在の知人が、心臓の冠動脈…


 アフリカの都市に駐在の知人が、心臓の冠動脈治療で一時帰国した。中空の管(カテーテル)を血管の狭窄(きょうさく)部に入れ、金属製の筒(ステント)を留置、血流を良くするという手術だ。

 以前は足の付け根から挿入し体の負担も大きかったが、今回は手首の動脈からで、手術が終わったその日に歩くこともできたという。今週中にも患部を再検査しアフリカに戻るそうだが、良好な結果であってほしい。

 体にメスを入れないで心臓を治すという進歩著しい医療技術は、カテーテルによる治療法の発明の寄与が大きい。加えて、患部の正確な情報把握を可能にした画像診断法の開発を見逃せない。

 画像診断には1970年代に登場したX線CT(コンピューター断層撮影法)と、少し遅れて生まれたMRI(磁気共鳴画像診断法)がある。心臓の画像診断法として注目されるようになったのはつい最近のことだ。

 特にMRIは、臓器の形を立体的に精密に描き出すことができる。実はこの診断技術は医療研究ではなく、核磁気共鳴(NMR)という原子核による現象の研究の中で発見された。

 NMRの「N」は「核」の意味だが当時、核は嫌われるとして、MRの下にイメージングのIを書き、MRIという医療器具として定着した。現代の先端医療では他にも核技術の応用は不可欠となっており、それらの技術内容が社会により理解されるよう啓発が必要だ。