「玉虫の光を引きて飛びにけり」(高浜虚子)…
「玉虫の光を引きて飛びにけり」(高浜虚子)。玉虫は、稲畑汀子編『ホトトギス新歳時記』によれば「金緑色に輝く三センチくらいの流線型の美しい昆虫である。背中には紫赤色の二条の線が縦にはしっている。夏季、榎にくることが多い」。
小学生の頃だったと思うが、教科書で玉虫の羽を使って作られた「玉虫厨子(たまむしのずし)」の物語を読んだ。作者もストーリーも覚えていなかったが、もう一度読んでみたいと思ってネットで検索すると、どうやら平塚武二作・太田大八画『絵本玉虫厨子の物語』のようだった。
サイトに掲載された読者の感想などを読むと、気流子と同じように、学校の教科書で読んで懐かしい気持ちになっている人が少なくない。それだけ子供心にも深い感銘を与える話なのだろう。
教科書で紹介されている小説などは、後々まで忘れ難いものがある。例えば、芥川龍之介の短編や有島武郎の「生れ出づる悩み」などは今でも、折にふれて思い出すほど。
玉虫厨子については、実物を見てみたいと思っているが、現在まで機会がない。実際には、もはや玉虫の羽はほとんどなくなっていて、レプリカが作られている。
玉虫では勘違いもある。玉虫をタンスに入れておくと、虫除けになると思い込んでいた。これは「この虫を捕え、紙に包んで箪笥(たんす)や化粧箱に入れておくと衣装がふえ、人に愛されるという迷信」(『ホトトギス新歳時記』)が本当のようだ。