茨城県石岡市に茨城県フラワーパークがある…
茨城県石岡市に茨城県フラワーパークがある。広大な公園で、園内を一望できる「ふれあいの森」には1万2000株ものヤマユリが自生している。今月11日から26日まで「やまゆりまつり」が開かれる。
その大群落は日本一とも言われる。期間中、群生地鑑賞会や園芸教室、品評会なども行われる。朝の涼しい時間に鑑賞できるようにと7時30分の開園だ。風にゆらぐユリの花は清楚(せいそ)で、気品がある。
フラワーパークの西に筑波山がそびえているが、ユリはこの地で古代から親しまれていたようだ。万葉集にこんな歌がある。「筑波嶺(つくばね)のさ百合(ゆる)の花の夜床(ゆとこ)にもかなしけ妹ぞ昼もかなしけ」。
中根三枝子著『萬葉植物歌考』によると、「筑波嶺に咲き匂うゆりの花ではないが、その夜の床でもかわいい子は昼もかわいくてたまらぬ」の意で、「さ百合の花」に妻のいとしい姿を匂わしている。
ユリは球根が食用、薬用として重宝され、庭や畑にも植えられていた。万葉集にユリの歌は10首あるが、食用、薬用としては一首も詠まれていない。万葉集ではユリが咲くのを「花笑み」と歌い、女の笑うのも「花笑み」と喩(たと)えている。
「百合」と書いたのはなぜか? 球根が鱗片(りんぺん)の寄り集まりなので「寄り」が転化し、結合の意味では「結(ゆ)る」となり、「百合」と合致するという。これは食材の観点からの表記らしい。花を愛でながら、球根にも目を付けていたのだ。