「亡くなった方の名前を言えますか」と尋ねる…


 「亡くなった方の名前を言えますか」と尋ねる被害者の父親に、32歳の被告は3人の名前を答えた。父親は「絶対忘れないでください。毎日手を合わせてください」と求めると、被告は何度も頭を下げた。

 1年前の7月、北海道小樽市の市道で海水浴帰りの若い女性4人をRV車ではね3人が死亡、1人が重傷を負った悲惨な事故を覚えている方もおられよう。運転する前に12時間も酒を飲んでいた男は飲酒運転の上に、ひき逃げの悪事も加わる。

 札幌地裁の裁判員裁判はこの3日に懲役22年を求刑して結審し、9日に判決の予定である。この事故については大々的に報道され、飲酒運転事故への厳罰が言われているのに、また北海道で先月6日夜に悪質な運転による悲惨な事故が起きている。

 砂川市の国道交差点に、競走し100キロを超える暴走で突っ込んできた2台の乗用車。1台目と衝突した1家5人が乗る軽ワゴン車は吹っ飛ばされ大破、3人が死亡し1人が重傷を負った。

 さらに、車外に投げ出された1人が飲酒運転の2台目にひかれ、引きずられて死亡している。26歳と27歳の暴走男は、いずれも危険運転致死傷容疑などで取り調べを受け、法の裁きを待つ身だが、あまりに悪質な所業と被害者の無念を思うと言葉を失う。

 悪質運転防止には罰則強化の他に有効な手が見当たらないのが悲しい。先月末まで今年前半の交通死者は昨年同期比32人減の1893人である。