陸奥宗光は、版籍奉還、不平等条約の改正…


 陸奥宗光は、版籍奉還、不平等条約の改正、日清戦争など明治の政治外交史に大きな足跡を遺した政治家・外交官である。岩波文庫にも入っている『蹇々録(けんけんろく)』は陸奥の外交的回想記で、近代日本外交研究の必読書と言われる。

 アジアに勢力を扶植しようとする欧米列強と隣国の中国、韓国の間で、国家の独立と国益を守るため、いかに陸奥が冷徹なリアリズム外交を展開したかが生々しく伝わってくる。「カミソリ大臣」の面目も躍如としている。

 韓国の「月刊朝鮮」が『蹇々録』を取り上げていることが、小紙の論壇時評(海外編)で紹介されている。それによると、同誌の裵振榮(ペジニョン)記者は「無知蒙昧(もうまい)な役人しかいない朝鮮政府は乱世に対処する定見がなく……」など陸奥の「朝鮮への蔑視」に頭に血を上らせる。

 しかし、その事実を呑み込んで、一方的に日本を非難するだけでなく、自らのふがいなさを嘆き、どうすれば克服できるかを考える。小紙時評は、これを韓国人の一つの変化と指摘している。

 陸奥は紀州藩士の子だが、尊皇攘夷派となり、坂本龍馬と知り合って海援隊に入隊。維新後は投獄されたり、英国に留学したり、波瀾(はらん)の生涯を送る。結核を患いながらも外交の衝に当たり53歳で亡くなった。

 その戦略的思考、リアリズムそして気概を学ぶため、日本人こそ『蹇々録』を読むべきだろう。生涯と思想については故・岡崎久彦氏の『陸奥宗光』(PHP文庫)という好著もある。