「昨年は、新疆ウイグル自治区での弾圧が…


 「昨年は、新疆ウイグル自治区での弾圧が最もひどい1年でした。把握する限りで殺戮行為は37回、4千人以上のウイグル人が殺害されました」。ノンフィクション作家の河添恵子さんが、今年2月に来日したウイグル民族民主運動の指導者ラビヤ・カディール女史の悲痛な叫びを伝えている(月刊「テーミス」3月号)。

 自治区ヤルカンド県で「武装グループが住民37人を殺害し……警察が容疑者59人を射殺し、215人を拘束」(中国新華社通信)と報じられた昨年7月28日の襲撃事件。当局は「重大暴力テロ」と断じた。

 ところが、ウイグル現地からの告発はまるで異なるという。「ヤルカンド県で人民解放軍による大規模な虐殺が行われ、少なく見積もっても2千人のウイグル人が殺害され、罪なきウイグル人が大量に逮捕された」と。

 先月下旬に参院議員会館での研究会で、日本ウイグル協会のイリハム・マハムティ代表はウイグル地域の現状を「青空刑務所と言っても過言でない」と訴えた。

 チベット問題やウイグル問題での判断は難しい。果たして中国当局の言う通りなのか、ウイグル側の主張が正しいのかメディアが直接確かめられないから。

 中国のテロ対策強化を報じる記事も「中国当局が『テロ』対策の名の下に強める統制にウイグル族の不満が高まり、密出国を促す原因に」(読売3月11日)とか、イリハム氏の談話(産経・同)を入れたり、バランスに苦心している。