理化学研究所の野依良治理事長が辞任する…


 理化学研究所の野依良治理事長が辞任する意向を固めたという。小保方晴子元研究員のSTAP細胞の論文不正問題で責任を取ったのは明らかだ。

 野依氏は昨年3月の記者会見で「多くの方にご迷惑を掛け、おわびする」「未熟な研究者が膨大なデータを集積し、極めてずさんな取り扱いをした」と謝罪。その厳しい表情に、この件で一番悔しい思いをしているのは氏自身だと改めて感じた。

 理研は1917年、実業家の渋沢栄一らの建議で設けられた国内唯一の自然科学の総合研究所。その独立行政法人への移行に当たり、2003年に野依氏が理事長に任命されたのは、21世紀の技術立国として、政府が科学技術の産業への応用を重視する方針を打ち出した結果だった。

 それに応え「世界への発信が課題。はっきりした目的を設定し、既存の分野を融合する研究を進めて社会に貢献したい」と語った。化学と物理学、医学のコラボレーションによる研究、実用化を次々と図った。

 野依氏は触媒の研究による01年のノーベル化学賞受賞者だが、その対象となった発明は1980年代のもの。理事長として、こうした基礎研究の成果を日本産の技術として開花させる時が今だという認識だった。

 科学の社会的役割の重要性を肌で感じ取っていた。STAP問題に関するメディアの報道は過熱気味だったが、図らずも科学に対する社会的関心の高さが示された。