<啓蟄(けいちつ)を啣(くは)へて雀(すずめ)…


 <啓蟄(けいちつ)を啣(くは)へて雀(すずめ)飛びにけり> 川端茅舎(ぼうしゃ)。4年続きの厳冬も、今年は昨年ほどは厳しくなかった。天気も寒暖も毎日変わるこの頃だが、それでも冬と春のせめぎ合いは、冬を後退させつつ本格的な春への歩みを着実に進めている。

 6日の啓蟄を前後してウェザーテックの「生物季節観測」でも、開花便りに加えて野鳥便りなども増えてきた。ウグイス初鳴き(4日熊谷、6日宇都宮・前橋・福岡・名瀬、7日佐賀、8日広島)。

 ヒバリ初鳴き(2日鹿児島・岡山、6日富山・鳥取、7日宇都宮、8日岐阜・松江)、モンシロチョウ初見(8日熊本・宮崎)など。サッカーはJリーグが始まり、ヤンキース帰りの黒田博樹選手(広島)に注目が集まるプロ野球もオープン戦がスタートした。

 森羅万象が活動を始める春は、山からもやって来ることを正岡子規は<故郷やどちらを見ても山笑ふ>と詠んだ。草木が柔らかく芽吹き、花もみずみずしい色を帯びて明るく春を歌う。

 桜も緋寒桜(ひかんざくら)と早咲き大島桜の交配種と言われる河津桜(かわづざくら)が先月末から、いち早く東伊豆の川筋を濃いピンクに染め、日に日に華やぎを競っていることが伝えられる。

 続く本命ソメイヨシノの開花予想が日本気象協会から出ている。全国的には概ね平年並みで、東京都心の開花も平年と同じ26日、満開は平年より1日早い4月2日とか。のどかで、優しく明るい季節がすぐそこに来ているのである。