群馬大医学部付属病院(前橋市)で40歳代の…


 群馬大医学部付属病院(前橋市)で40歳代の男性医師による肝臓の腹腔鏡手術を受けた患者8人が相次いで死亡した問題で、その全例について「過失があった」との調査報告が発表された。

 肝臓の最新の腹腔鏡手術は難度が高く、その実績を積もうと焦りがあったのではないかという見方もある。患者が二の次では医師失格だ。この手の医師にかかると患者はたまらないし、医療スタッフたちも翻弄(ほんろう)される。

 同病院長が記者会見で「閉鎖的な体制があった」と弁明している。この医師が同じ手術で何度も失敗し、カルテなど書類作成のずさんさが明白なのに、手術チームの医療スタッフが物申すことができなかったということだろう。

 確かにチームを組んで大手術をする時の医師の権限は絶対的だ。一刻を争う人の命を預かっているのだから、当然とも言える。周囲のスタッフが口を挟んだり、意見したりすることはなかなかできないようだ。

 しかし医療も人間がすることなので、判断の微妙なずれやケアレスミスはままある。必ずしも医療ミスとは言えないことでも、常に医師とスタッフが自由に話し合える風通しの良さを保つことが非常に大切だ。これで過ちを繰り返さずに済む。

 大病院には高額な検査機器、手術の最新設備が整っていて、建物も立派だ。しかし、そこで働く医師たちに人間性や常識が備わっているかどうかは、また別の問題のようだ。