黒澤明監督の「天国と地獄」(昭和38年)は…


 黒澤明監督の「天国と地獄」(昭和38年)は、身代金誘拐事件を扱った社会派サスペンス映画。犯人が特急「こだま」の車内にいる主人公に電話をかけ、酒匂(さかわ)川の鉄橋を過ぎた所で身代金の入ったバッグを洗面所の窓から投げるように指示するシーンが話題となった。

 犯罪に乗り物を利用するケースは、相変わらず多い。「オレオレ詐欺」では最近、地方の高齢者を飛行機で羽田空港などに呼び出すケースが相次いでいるという。地方は都市部ほど警戒心が強くないことを狙ったものだ。

 「会社の金を使い込んだ。羽田空港まで持ってきてほしい」などと電話で息子を装い、高齢者を呼び寄せる。現金を持って羽田に降り立ち、勝手が分からない老人を、さらに場所を変更したりして混乱させ、まんまと騙(だま)し取るのだという。

 しかし、中には空港関係者の機転によって被害を免れたケースもある。羽田空港で先月、不安そうにしていた高齢者の婦人に声をかけ、交番へ連れて行って被害を防いだJALスカイの旅客担当の2人の女性が警視庁から感謝状を贈られた。

 犯罪を防ぐには周囲の目がいかに重要かを示した。振り込め詐欺といわれるオレオレ詐欺だが、「手渡し型」や宅配便などを使った「送付型」が増えている。

 乗り物利用ということでは、新幹線で持って来させる手口も以前からあるという。次々に出てくる新手口は、速やかにメディアが知らせていく必要がある。