新潟県南魚沼市は日本有数の豪雪地帯で、…


 新潟県南魚沼市は日本有数の豪雪地帯で、コシヒカリの単作でも名高い。この地方で兼業農家を営む俳人の若井新一さんが、第54回俳人協会賞を受賞。その授賞式が先日、行われた。

 受賞作は第4句集『雪形』だが、これまでも『雪意』『雪田』『冠雪』と、句集名に「雪」の文字が使われてきた。「雪霏々と越後の方位消えにけり」「泥舐めむばかりに這うて田草取」など、風土性や季節感の表現が評価された。

 若井さんは神奈川大学卒業後、大企業に就職したが、土日祭日は帰省して農作業に従事。選考委員長の大串章さんは「これは大変な努力だった」と前向きの生き方、力強い人生観を称えた。

 若井さんは「今、2メートル以上の積雪がありますが、残雪も消えるころになると、雪形を見ながらコメ作りが始まります」とあいさつ。師の目崎徳衛さんからは切れ字について学び、同じく師の鷹羽狩行さんからは「田舎の句を詠んでも意味の分かる句を」と指導を受けたという。

 受賞者はほかに新人賞が井出野浩貴、鶴岡加苗、望月周の3氏、評論賞が岩淵喜代子、榎本好宏の両氏、評論新人賞は青木亮人氏だった。将来の俳人協会を担っていく人たちである。

 同協会顧問の有馬朗人さんは「若い人がいない分野は滅びていく。科学でも文学でもそうで、後継者がいなくなった時没落する」と語り、「後継者が続々できていることをうれしく思う」と喜んだ。