1983年に横浜市の山下公園や横浜スタジアム…


 1983年に横浜市の山下公園や横浜スタジアム周辺などで浮浪者が次々に襲われ2人が亡くなる事件が起きた。駆け出し記者の頃で、取材のため現場に何度も足を運んだ。

 犯人たちは横浜市内に住む中学生を含む少年グループで、社会に大きな衝撃を与えた。被害者と少年たちに利害関係はなく、殺害動機があまりにも薄弱。集団暴行によるもので、少年らに殺人の罪意識さえなく人々の心胆を寒からしめた。

 当時、急速に整備されてきた公園や路上、街中は経済的に豊かな時代の到来を象徴したが、これらが逆に少年グループの自分勝手な欲望を満たす場となり放置された。また最悪の事態に至るまでの周囲(家庭だけでなく地域)の無関心さが際立っていた。

 集団が弱者を狙い撃ちする類似の犯罪はその後も起きているが、結果的にその始まりとなるような事件だった。この種の犯罪はその後、より陰惨な様相を呈しているのではないか。

 川崎市川崎区の多摩川河川敷で中学1年上村遼太さん(13)が殺害された事件で、警察は殺人容疑で同区に住む自称無職でリーダー格の少年(18)と、17歳の少年2人を逮捕した。若年の加害者らの心の闇はさらに深くなっているようにもみえる。

 この少年たちの罪は憎みて余りある。その上で、昨今の家族や地域での人間関係の希薄化、変容の事実を見つめつつ、大人が襟を正すべきところは大だと思われる。