佐賀県の佐賀空港から飛行機に乗ると、眼下に…


 佐賀県の佐賀空港から飛行機に乗ると、眼下に有明海が見える。海原に広がっているのが海苔(のり)畑である。佐賀海苔の生産量は日本一。潮の干満の差は最大6㍍になり、それを利用することで、柔らかく、ほのかに甘い海苔ができるのだそうだ。

 有明海には珍しい生物がいる。有名なムツゴロウもそうだが、佐賀市が注目したのがワラスボ。ハゼ科の魚で、ウナギのように細長く、全長40㌢ほど。佐賀市は町興しの主役にこれを選び、PR動画を作成した。

 地元のテレビニュースでそれが紹介された。舞台は同市東与賀町の干潟よか公園。東京からやって来たカップルが不思議な骨を発見し、それが未知の生物「WRSB」と判明して日本中がパニックとなるというもの。

 WRSBはWARASUBOの略。秀島敏行市長も出演する力の入れようで、人口減少に歯止めを掛けたいという思いもある。地元の人たちは食べることがあるようで「干物が美味しい」と言う。

 佐賀市に滞在中、スーパーに行ってみたが、ワラスボは置いてなかった。見つけたのは佐賀空港の土産物売り場。干物である。ワラスボが未知の生物のモデルとなったのは、グロテスクな頭と目立った歯を持つためのようだ。

 骨が堅く、肉はわずか。食べる際には、包丁の背でたたいてから、炙(あぶ)ったり、油で揚げたりする。身が縮んで骨もさくさくとなり、食べやすい。酒のつまみといったところ。これこそ珍味だ。