「ゴーストライター」という名のテレビドラマ…
「ゴーストライター」という名のテレビドラマが放送中だ。去年の佐村河内守さんの別人作曲問題にヒントを得たのかどうかは分からないが、ドラマは小説家の話だ。
ゴーストライター本人から話を聞いたことがある。当時有名だった女性タレントの自伝本を作るというので、一流ホテルでインタビューした。朝から晩まで10時間程度。それを2日間続けて、その後原稿を自伝風にまとめる。
現在は有名作家として活躍中だ。ゴーストライターは日本語に訳せば「幽霊作家」だが、略して「ゴースト」と呼ばれる。
他人の書いた作品を自分の名前で発表することは、昔もあった。当時はもっと露骨に「代作」と言った。戦前のことだが、川端康成も当時無名の女性作家の作品を自分の名前で発表したことがある。この事実は、小谷野敦著『川端康成伝』に明確に記述されている。女性は戦後、著名な作家となった。
これは経済的支援のためで、原稿料は川端が受け取るが、全額が女性作家に渡る。ドラマのように、創作能力が低下したので代作を依頼した、などという話ではない。川端以外の作家も、当時は似たようなことをやっていた。
出版社も、事情はよく分かった上で黙認する。読者よりも、川端のような有力な書き手を重視するのは当然だった。が、著作権についてやかましくなった今、ゴーストライター問題は芸能人本などに限られるようになった、というのが実情だ。