中学1年の虫歯本数は1人平均1本で、…


 中学1年の虫歯本数は1人平均1本で、30年前の約5分の1となったことが、文部科学省の2014年度学校保健統計調査(速報値)で分かった。同省は「歯磨き指導の成果で、早期治療や予防の意識が高まった」と分析している。

 戦後、健康増進に関して国が展開した国民運動の一つに虫歯をなくす運動があった。学校保健教育にも採り入れられ、昭和30~40年代には小学校で歯磨きの講習が行われた。そのため、歯ブラシを持参したものだった。今中1の親の親の中には覚えがある人がいるかもしれない。

 平成元年から始められた「8020運動」は満80歳で20本以上の歯を残そうとするもの。そのための準備は子供のころから必要で、1歳6カ月児・3歳児歯科健診をはじめ、保育園、幼稚園、学校での健診や予防活動などが実施された。「虫歯1本」は親子3代にわたっての国民運動が功を奏したものだと言えるだろう。

 時代は変わり、今日は21世紀の超高齢化社会を見据え、生活習慣病や認知症などへの対策が急務になっている。政府は先日、主に認知症のための新オレンジプランを発表した。

 過去の国民運動の教訓から言えば、政府が目指すべき健康社会の青写真をしっかり描き、その実現のためにリーダーシップを発揮すること。

 また予防対策に主眼を置くことや、高齢者の子供や孫にも関心を持たせて家族を巻き込んだ健康増進運動にすることなどが肝要だ。