テロで多数の犠牲者を出したフランスの…


 テロで多数の犠牲者を出したフランスの風刺週刊紙シャルリエブドが、表紙にイスラム教の預言者ムハンマドを描いた特別号を発行した。テロや過激主義を厳しく非難したイスラム教徒からも「挑発だ」との批判の声が上がっている。

 シャルリエブドがムハンマドの風刺画を掲載したのは、表現の自由を貫くとの意思表示なのだろう。しかし、多くのイスラム教徒の心を傷つけることを知りながら敢(あ)えて行うのは配慮がなさ過ぎる。これまた、表現の自由を絶対視する一種のファンダメンタリズム(根本主義)であり過激主義である。

 「自由・平等・博愛」を掲げたというフランス革命だが、その暗黒面も忘れてはいけない。ジャコバン党の恐怖政治は有名だ。フランス革命は宗教を敵視し、多くのカトリック聖職者を虐殺した。

 特別号の表紙に「すべては許される」と書かれてある。この意味は色々に解釈できる余地があるが、表現の自由によって、宗教もタブー視しない、何を書いても許されるということなのか。「神がいなければ全ては許される」というドストエフスキーの言葉を思い出す。暴力は物理的なものだけではない。殺人に劣らぬペンの暴力もある。

 フランスの別の風刺紙はかつて福島第1原発事故を報じる記事で、手や脚が3本ある人物を描いた風刺画を掲載し、日本政府の抗議にも謝罪を拒んだ。根本主義は必ずしも宗教だけではないことを知るべきである。