衆院総選挙の投票が行われるあす14日は…


 衆院総選挙の投票が行われるあす14日は、赤穂浪士討ち入りの日(元禄15年)である。大石内蔵助ら四十七士が眠る東京・高輪の泉岳寺では、毎年義士祭が行われるが、今年は少し様子が異なったものになりそうだ。

 泉岳寺のすぐ隣で高さ24㍍8階建てのマンションの建設工事が始まったのが10月。「歴史的景観を台無しにする」と猛反発した寺と住民は「泉岳寺の歴史的文化財を守る会」を結成し、約1万人の反対署名を集めた。義士祭も建設反対の決起集会になりそうだ。

 今週、取材とお参りを兼ねて泉岳寺を訪ねると、中門脇に「建設反対」の立て看板があった。そして左隣のマンション建設予定地ではコンクリートの基礎工事が行われていた。

 「忠臣蔵」は、日本武士道を象徴する国民的な物語である。義士たちの墓に香華の絶えることがない泉岳寺は、国指定の史跡である。しかしマンションができれば、恐らく8階からは墓を見下ろすことになろう。

 武士道に憧れ、泉岳寺を訪れた外国人に、この景観破壊をどう説明するのか。建設を進める不動産会社は、港区の規制の範囲内で計画変更の予定はないというが、法的に問題がなければいいというものではない。明らかに公益に反しており、文化的な国民のすることではない。

 文化的歴史的景観の破壊は多くの史跡で起きている。法整備の遅れを取り戻し、何よりわれわれがその価値に目覚める必要がある。