朝日新聞が慰安婦大虚報や東京電力福島第1…


 朝日新聞が慰安婦大虚報や東京電力福島第1原発の吉田昌郎元所長の調書をめぐる誤報問題で大童の対応が続く中、ひとりの大先輩ジャーナリストが彼岸に旅立った。朝日の元常務取締役東京本社代表の青山昌史氏である。

 と書くよりも、カメラマンの自作自演が発覚した「沖縄サンゴ礁損傷事件」(1989年)の際、広報担当取締役として激しい批判の矢面に立たされた。やや紅潮した表情で身体を張り、分かっている事実をそのまま誠実に述べるテレビの映像を覚えている人も少なくないだろう。

 気流子はサンゴ事件の前から、朝日の偏向報道を問う連載チームにいたことから、何度も本社に押しかけ取材した。小紙の追及を青山氏は、いやな顔もせず鷹揚に正面から受け、反駁すべきは毅然と反駁した。

 取材でぶつかることも多々あったが、一方で自社他社の区別なくオープンに後輩記者を遇する姿勢は一貫していた。教えられたことも少なくなく、その横綱相撲に「さすがは天下の朝日」と思わされたものだ。

 だが、いまは批判の矢でも鉄砲でも来いと仁王立ちして立ちふさがる、腹の据わったサムライもいなくなった。面倒ごとは自社で責任を持って徹底検証するのではなく、第三者委員会に丸投げする始末。存亡の危機にあるのに、官僚的な対応ばかりが目立つのはいただけない。

 青山氏84歳の旅立ちは先週の火曜日。葬儀の遺影を飾った白一色の花がその潔い一生を讃えていた。