「空で光彩の爆発が起っていた。赤と緑が…


 「空で光彩の爆発が起っていた。赤と緑がからまり合って渦を巻き、その中心から緑の矢があらゆる空間に向って放射されていた。彼に向って降りそそがれる無限に近いほど長い緑の矢は間断なく明滅をくりかえしていた」。

 新田次郎の『アラスカ物語』で描写されたオーロラの情景だ。彼がアラスカに行ったのは1973年のことで、アラスカ大学で赤祖父俊一博士からオーロラの研究成果を取材し、カラー映画を見せてもらう。

 「写真でしか見たことのないオーロラの実際の姿を次から次と見せられて私はその美しさと怪奇さに圧倒された」と回想する。だが、現在では、当時と比べ物にならないほど、観察技術が向上している。

 デジタルカメラの感度と画素数が高まり、高精度のオーロラ画像を撮影できるようになった。その成果が、東京・上野の国立科学博物館で始まった「ヒカリ展」で紹介されている(来年2月22日まで)。

 3Dの上映で、大空で揺れ動いて明滅を続ける様子がすごい。光をテーマにしたこの展覧会では、世界初公開の「光る花」、蛍光タンパク質で光るシルク、紫外線を当てると輝く蛍光鉱物など、注目すべき展示物が多い。

 光についての百科事典という趣だが、隣り合わせの若い女性に聞くと「オーロラが最高」と絶賛した。70年代には人工衛星によるオーロラの観測が始まり、89年に打ち上げられた観測衛星「あけぼの」は今も活躍中だ。