文芸評論家の故亀井勝一郎は生前、武蔵野市…
文芸評論家の故亀井勝一郎は生前、武蔵野市の御殿山に住んでいた。来客のある日の朝には、近くの井の頭公園へ歩いて行き、「お茶の水」で水を汲んで、それで茶を立ててもてなしたそうだ。
「お茶の水」は池の片隅にある湧き水で、徳川家康が狩りに来た時も茶を立てて飲んだという。良質の水だったが、戦後に周辺が市街化され、地下水も大量に汲み上げられて池は干上がった。
その後は井戸水で補給しているが、水質は悪化し、外来魚の繁殖などで生態系も変わった。そこで今年1月から3月にかけて、水質改善と生態系の回復を目的に行われたのが、池の底を天日干しする「かいぼり」だった。
排水してみたら、底から自転車が230台も出てきて、見守っていた人たちを驚かせた。捕獲された魚の77%が駆除すべき外来魚だったそうだ。そして夏が過ぎると、かいぼりの効果が表れ始めた。
池の透明度が向上したというのだ。さらに絶滅したと思われた水生植物のシャジクモやヒロハノエビモが復活した。また底泥をとって発芽実験するとハダシシャジクモ、ホッスモ、コウガイモなどが発芽した。
調査にあたったのは東邦大学理学部生命圏環境科学科と千葉県立中央博物館の研究チーム。一方、泥に潜って駆除できなかったアメリカザリガニは増えて「かいぼり隊」の難関となっている。2017年まであと2回、かいぼりを行うそうだが、回復への期待は高まる一方だ。